2022.10.28
体組成計は、身体に電気を流して、その際の電気抵抗値(インピーダンス)を基に体組成を推定する方法です。何らかの影響で、計測対象者の体組成以外の要因でインピーダンスが変化してしまうと、体組成結果にも誤差が生じてしまいます。そこで本コラムでは、医療機関やフィットネスクラブなどの施設で体組成計を使用するうえで、是非とも気を付けていただきたいポイントを紹介します。
体組成計は、生体電気インピーダンス法(BIA)を利用して体組成を推定する機器です。BIAでは「脂肪組織はほとんど電流が流れないが、水分と電解質を多く含む除脂肪組織は電流が流れやすい」という性質を利用します。具体的には、身体に微弱な電流を流して、その際の電気抵抗値であるインピーダンスを測定し、これと体重や身長などから、回帰式(アルゴリズム)を介して体組成が導き出される仕組みとなっています。
例えば、体組成計で身体に微弱な電流を流した際、筋肉量や体水分量が多い人は小さなインピーダンスに、少ない人は大きなインピーダンスとなります。このように、本来インピーダンスは計測対象者の体組成によって変化しますが、これ以外に脱水や手足の乾燥などの「身体の状態」や「計測時の姿勢」の影響も受けてしまいます。
以下の図に、望ましい計測条件を示しました。すべての条件をそろえることは難しいと思いますが、体組成計測に影響を与える条件とその理由をご理解いただき、可能な範囲で条件を整えることをおすすめす。
推奨される計測条件※1
条件 | 理由 |
---|---|
身体の状態による誤差、体重の一時的な増減に気を付ける | |
起床後2時間以上経過し、この間通常の生活活動が行われていること | 就寝時は脱水が生じやすく、また長時間の臥位により脚部の水分量が減少する影響を取り除くため |
食後2時間以上経過していること | 飲食による体温上昇、体重増加の影響を抑えるため |
計測前に排尿・排便する | 体重に誤差を与える要因を取り除くため |
運動直後の計測を避ける | 運動による脱水、体温上昇の影響を取り除くため |
入浴直後の計測を避ける | 入浴による脱水、体温上昇の影響を取り除くため |
浮腫や脱水のある場合の計測を避ける | 浮腫や脱水の影響を取り除くため |
発熱時の計測を避ける | 体温上昇の影響を取り除くため |
繰り返し計測する場合は、できる限り一定の時間帯(同一条件下)に行う | 食事などの影響を取り除きやすくするため |
手足が乾燥していない状態で計測する | 乾燥によって通電しにくくなるため (対処法:乾燥している場合は、手足や電極をエタノールなどで湿らせてから計測する※2) |
手足が冷えていない状態で計測する | 末梢体温の低下と血流量の減少により、計測結果に誤差が生じるため (対処法:冷えている場合は、温めてから計測する) |
着衣量を正しく設定する | 実際の着衣量との差が大きい場合、体重に誤差が生じるため |
計測時の姿勢に気を付ける | |
計測中は動いたり話したりせずにリラックスした姿勢を保持する | 毎回同じ姿勢で計測するため |
機器の取扱説明書などで推奨されている姿勢で計測する (測定台への乗り方、グリップの握り方、脇の角度など) | 製造企業が指定する姿勢以外では、計測結果に誤差が生じてしまう可能性があるため |
皮膚同士の接触を避ける(脇の下、内ももなど)※3 | 測定経路が短くなってしまうことを防ぐため (対処法: 接触してしまう場合は、該当箇所にタオルなどを挟む) |
本コラムでは、体組成計を使用するうえで、ぜひとも気を付けていただきたいポイントを紹介しました。より正確に体組成をはかるために、本内容を深く理解されたい方は、コラム「体組成計の原理」も併せてご確認ください。