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そこの女子、筋肉ありますか? ~筋肉不足にひそむリスク~

2023.07.21

近年、痩せすぎ、かつ筋肉量が少ない女性が増えていることが社会問題になっています。 みなさんは、体重を落とすことだけを考えたり、食事制限のみで痩せようとしたりしていませんか? そのようなダイエットを続けていると、太りやすく、キレイなシルエットをつくることが難しい「筋肉不足のからだ」になってしまう可能性があります。 今回は、女性が筋肉をつけることの大切さについて、体組成計の技術開発を担当する宮下がご説明します。

回答者プロフィール

株式会社タニタ 開発部 生体科学課 宮下 真理子
入社後バイオセンサーを活用した尿糖計の認知活動に従事。糖尿病関係の研究に取り組み、論文執筆や学会発表を担当する。その後、体組成計や活動量計などの家庭向け商品の企画を経て、現在は体組成計の基礎技術の開発にあたっている。


Q1 どうして筋肉が必要なの?

A 痩せやすいからだ、引き締まったからだをつくるためだけでなく、健康のためにも筋肉が必要です。

食事制限によるダイエットを行い、短期間でストンと体重が落ちてうれしい気持ちになった経験がある方は多いと思います。

たしかに、食事量を抑えるダイエットは、運動によるダイエットと比べると、早い段階で体重が減りやすいものです。でもそのとき減っているのは、からだにとって大切な筋肉や水分がほとんどだということはあまり知られていません。

 

太りにくく痩せやすいからだをつくったり、美しいシルエットのからだを目指したり、健康を維持したりするためには、筋肉が必要です。

筋肉不足によって起こるリスク

ダイエットの視点から考えると、筋肉不足には次のようなリスクがあります。

 

(1)どんどん痩せにくく太りやすいからだになる
筋肉量が多いからだは基礎代謝量が高く、運動をしない日でもたくさんのエネルギーを消費できます。一方、筋肉量が減ると基礎代謝量も落ち、エネルギーを消費しにくいからだになります。

食事制限ダイエットによって筋肉&基礎代謝が落ちたあとに食事量をもとに戻すと、「筋肉が少ない状態で脂肪が増える」ことになり、ダイエット前よりもっと痩せるのが大変に。そこでもう一度食事制限で痩せようとすると、筋肉量も基礎代謝もさらに低下して、どんどん“痩せにくく太りやすい体質”になってしまいます。
また、極端な食事制限は摂食障害や心の不調にもつながるため注意が必要です。

 

(2)むくみやすくなる
筋肉の収縮は血流を促進します。筋肉が少ないと血流が悪くなり、多くの女性が悩むむくみにつながります。

筋肉が衰えると健康にも悪い影響がある

将来的な健康維持の視点からも、筋肉不足には次のようなリスクがあります。

 

(1)転びやすくなり、骨折やケガにつながる
筋肉が衰えたからだで年齢を重ねていくと、転倒リスクが上がり、骨折をはじめとしたケガをする可能性が増します。もしケガをして歩けなくなれば、今と同じ生活を送ることが難しくなり、それはやがて精神的な負担にもつながりかねません。

近年注目されている「フレイル(運動や認知の機能が低下した状態)」に陥る危険性もあります。

 

(2)糖尿病をはじめとした病気にもなりやすい
筋肉はエネルギーに変換された糖や脂肪を消費する役目も果たしているため、その量が減ってしまうと糖尿病のリスクも高まります。

また、筋肉量が減ると免疫機能が低下して、肺炎やその他感染症にかかりやすいといわれています。
 

筋肉をつけると起こる良いこと

筋肉を鍛えることは、引き締まった印象につながります。見た目の美しさという視点においては、次のようなメリットがあります。

 

(1)美しいシルエットを目指せる
脂肪量が少なくすらっとしていても、筋肉が少なく正しい姿勢を維持できないと、美しいシルエットが保てません。

「でも、女性アイドルはすごく細くてキレイだし……」と思うかもしれませんが、彼女たちの多くは長時間ダンスができるだけの筋肉があり、しなやかなボディラインや魅力的なパフォーマンスも筋肉があってこそ成り立っています。
美しいシルエットを目指すためには、筋肉、特に体幹を鍛えることが効果的です。食べないダイエットで体重を落とすよりも、外から見たときの印象をガラッと変えられます。

(2)年齢を重ねても若々しくいられる
筋トレの効果は若いうちのほうが出やすいもの。年齢を重ねてから筋肉をつけるのは大変なので、早いうちからしっかりと筋肉、そして運動習慣をつけておくのがおすすめです。

それを維持できれば、年齢を重ねても若々しいからだでいられます。


Q2 筋肉をつけるとごつくなるって本当?

A 誤解している方も多いですが、女性は簡単にはごつくなれません。

痩せたいと考えている方のなかには、「筋肉をつけるとごついからだつきになってしまうのでは……」と心配する方が少なくありません。

でも実際には、今「痩せ~標準体型」かつ「筋肉不足~標準的な筋肉量」状態の方が筋トレをしても、簡単にはごつくなれないのです。


なぜなら、女性は男性と違って「テストステロン」というたくましいからだつきに導くホルモンの分泌量が少ない傾向にあるから。トレーニングをして筋肉をつけたとき、引き締まることはあっても、ごつくなることは基本的にありません。

ごつくなるためには、アスリートやボディビルダーのような厳しいトレーニング、食事管理が必要です。


Q3 筋肉をつけても体重を増やさない方法はある?

A 有酸素運動で余分な脂肪を燃やせば体重が増えないこともありますが、「体重を減らす」から「自身の魅力を引き出す」という考え方にシフトするのがおすすめです。

筋肉は、脂肪と比較すると重さがあります。つまり、落とした脂肪と同じ体積だけ筋肉を増やすと、体重は増える可能性が高いといえます。


今、からだに余分な脂肪がある場合は、筋トレと有酸素運動を組み合わせて行うことで、筋肉を増やしながら脂肪を落とし、体重をキープor減らせる可能性もあります。

ただし、落としてもいい脂肪量には限界があります。脂肪は健康維持のために必要な組織で、減らしすぎると月経不順をはじめとした不調が起こるリスクもあるからです。
落とせる脂肪量が少ない方は、基本的には体重を増やさずに筋肉をつけていくことは難しいと考えてください。

 

ダイエットをするときに大事にしてほしいのは、「体重の数字」より「自分の魅力を引き出す」こと。

あか抜けない印象が気になるなら体幹を鍛えて姿勢を正す。特定の部分の肉づきが気になるならその部分の筋肉を鍛えて脂肪をつりあげる。自分の骨格や体型を知り、その良さを引き出せるようにする。

そうやって、体重よりも「自分史上最もキレイ」を目標にして、からだと向き合ってもらえたらうれしいなと考えています。


筋肉の大切さを知って、健康的にキレイを目指して

SNSで「シンデレラ体重」という言葉がさかんに使われたり、カリカリに痩せた女性の写真を目にする機会が増えたりして、これまで以上に体重や脂肪量を気にする方が増えています。かくいう私自身も、学生の頃は痩せ願望をもっていたので、「細くなりたい」という気持ちはよくわかります。

 

ただ、今回ご紹介したように、体重や脂肪だけを意識したダイエットをするリスクは大きいもの。女性アイドルのようなスタイルを目指すなら、まず彼女たちのような筋肉をつけることから取り組んでみてください。

でもどうしても体重計の数字が気になってしまう……という場合は、いつもの体重計を体組成計に変えてみるのも一手。体重ではなく、筋肉量や筋肉の質、基礎代謝量などの数字に注目してダイエットをすると、これまでとは違う変化を感じられます。

  • 本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。内容は予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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