タニタの考える健康
2022.05.16
新型コロナウイルス感染症の流行などもあり、日頃から体温計測(検温)を行う機会が増えたという方も多いはずです。しかし、体温に関する正しい知識を持っていないと、計測結果を誤って捉えてしまう可能性があります。体温計測を行う際は、体温の基礎知識を知っておくことが大切です。 そこで今回は、体温に関する基礎知識や正しい体温のはかり方、体温を上げて冷えを防ぐためのポイントなどをご紹介します。
「体温」とは、文字通り人体の温度のことを指します。体温は部位によって温度が異なり、例えば手足の末端や体の表面(体表面温度)は、暑さや寒さといった環境による変化を受けやすいため安定していません。
一方で、中枢や核心と呼ばれる体の内部の「深部体温(核心温)」は、脳や臓器の働きを正常に保てるように安定しています。
また、生命維持に必要なエネルギーしか使用していない、安静状態時の体温のことを「基礎体温」と呼びます。具体的には、寝ている間でもそれ以下には下がらない、その人にとって最も低い体温のことです。
特に、女性が自身の健康状態を知るうえで重要な指標となる体温です。
体温計測の結果が37℃を超えると、風邪を引いたと考える方は多いかもしれません。
実際のところ、健康な人はどれくらいの体温だと正常な範囲内だと言えるのでしょうか。日本人の体温の平均を始め、体温に関する基礎知識をご紹介します。
日本人の体温の平均は、ワキの下に体温計を挟んで行う「ワキ下検温」の計測結果で36~37℃程度だとされています。ただし、身長や体重と同じで平熱にも個人差があり、35℃台の「低体温」とされる人や、37℃台が平熱の方もいる点に注意が必要です。
また、人の平熱は年齢によっても変化し、小さい子どもはやや高め、高齢者はやや低めになることが多いです。年齢以外にも、運動や外気温、睡眠の質、その時の感情など、さまざまな要因で体温は変化します。
一般的には体温が37.5℃を超えると発熱とされますが、平熱に個人差があることからもわかるように、本来「発熱」と判断すべき体温にも個人差があります。
計測結果が36℃台だったとしても、平熱よりも明らかに高い場合は発熱を疑うなど、日頃から自身の平熱を知っておくことが大切です。
人間の体には、24時間単位で体温が変化するリズム(概日リズム)があります。早朝が最も低く、夕方が最も高くなるなど、体温は1日の間でも変化しているのです。
環境などによる影響はあるものの、一般的には1日の間で1℃ほど体温は変動しているとされています。
そのため、夕方の体温が朝よりも高かったからといって、一概に熱が出ていると言い切ることはできません。他の日の同じ時間帯にはかった体温と比べてみる必要があります。
女性の場合、ホルモンの作用による体温の変化も見られます。これは、排卵の後に分泌される「黄体ホルモン」と呼ばれるホルモンに、体温を上昇させる働きがあるためです。
通常、月経が始まると体温が下がり、排卵が起こるまでは低温期が、排卵が終わってからは高温期が2週間ほど続きます。排卵後に妊娠をしている場合は次の月経がなく、そのまま高温期が続きます。
ただし、低温期の長さは個人差があり、年齢やその時のコンディションによって変化する点に注意が必要です。
自身の体温を把握していれば、体温の変化から体の状態などを推測することも可能です。ただし、体温の知識を持っていたとしても、正しいはかり方ができていないと、体温計測の意味は薄れてしまいます。
ここでは、基礎体温の測り方と平熱を測る方法のポイントを、それぞれご紹介します。
基礎体温は、体を動かす前の安静状態時にはかるのが原則です。毎朝布団から出る前の、決まった時間に計測すると良いでしょう。
基礎体温を測る際は、細かな体温変化を確認しやすい婦人体温計を活用するのがおすすめです。
前述の通り、人間の体温は1日の中でも1℃ほど変化していて、部位によって温度も異なります。平熱を測る際は、朝と夜など、1日の中で異なる時間に同じ部位で検温を行い、時間帯ごとの平熱を出しておくと良いでしょう。
食事や入浴、運動をした直後などは体温が上がりやすいので避け、安静な状態で計測するのがポイントです。
また、1日だけ検温を行っても、正しい数値をはかれているとは限りません。何日かに渡って、同じ時間に体温をはかり続ける必要があります。
具体的な検温方法は、ワキや耳、口など、検温する部位や使用する機器によって異なるので、体温計の使い方を確認しておくことも大切です。
運動不足や食生活の乱れ、ストレスなどが原因で、近年は平熱が36℃を下回る低体温気味の方が増えているとされています。体温が低いと免疫細胞の働きが鈍くなるなどの影響があるとされているので、健康的に血行を良くして適度に体温を上げることが重要です。
では、どのようにすれば体温を上げられるのでしょうか。ここからは、体温を上げるために心がけたいポイントを4つご紹介します。
体温を上げるために意識したい1つ目のポイントが、適度な運動です。
低体温や「手足の冷え」には、運動不足などによる筋肉量の低下が関与しているとされています。これは、筋肉は血流を促したくさんの熱量を生み出すため、筋肉量が下がると体温も低下する傾向があるためです。
筋トレやストレッチなど、日常生活の中に適度な運動を取り入れることで、体温を上げる効果が期待できます。
帰宅時に一駅分歩いてみる、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うなど、無理のない範囲で運動を取り入れてみるのも良いでしょう。適度な運動なら、体温を上げると同時にストレス解消効果も期待できます。
物理的に体を温めることも、体温を上げるために意識したいポイントです。
低体温気味だと感じている方は、腹巻きや湯たんぽ、カイロ、ひざ掛けといったアイテムを積極的に活用してみるのも良いでしょう。手足の末端や、手首足首など細くなっている箇所を温めるとより効果的です。
代謝を上げて血流を良くし、体温アップを目指すためには、日頃の食生活も意識する必要があります。1日3食、栄養バランスの良い食事を心がけて基礎代謝の上昇を目指しましょう。
中でも、タンパク質が豊富な食材や、ショウガなどの体を温める効果があるとされる食べ物、温かい飲み物を意識的に摂取すると、食事による熱生産(熱産生)を高められます。
また、よく噛んで食べるのもポイントです。
しっかりと湯船に浸かることも、体温アップには重要です。
40℃のお風呂に15分ほど浸かると、深部体温が0.5℃程度上昇するとされています。水道代がもったいない、ゆっくり時間が取れないなどの理由から、シャワーを浴びるだけで入浴を済ませる方も多いかもしれませんが、冷えが気になる場合はできるだけ湯船に浸かることを習慣にしてみてください。
人間の体温は、環境や精神状態、時間帯など、さまざまな要因で刻々と変化しています。
朝と夕方、食事の前後など、体温計測を行うタイミングなどによっては、正しい計測結果が出ないことも考えられます。体温に関する基礎知識を覚えておくのは、検温を正しく行ったり、自身の体調の変化を察知したりするうえでも重要です。
また、体温の知識と併せて、健康的に体温を上げる方法を知っておけば、冷えを感じにくいからだを作ることにもつながります。毎日を快適に過ごすために、ご紹介した知識や体温アップの方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献:
入来正躬,「体温生理学テキストーわかりやすい体温のおはなし」,文光堂,2003年
「はかって、のばそう、健康寿命」,日本計量機器工業連合会
田中忠夫,「知っておきたい月経異常の診断と治療」,真興交易医書出版部,2001年
この記事はタメになりましたか?
人気記事ランキング
RANKING人気記事ランキング
RANKING