タニタの考える健康
2023.01.12
医療技術の進歩により、着実に日本人の平均寿命は延びています。それ自体はとても喜ばしいことですが、一方で、社会的に大きな問題となりつつあるのが「フレイル」。なんとなく聞いたことはあるけれど詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。 ここでは、健康長寿を目指すために知っておきたい、フレイルの概要や対策について解説します。
INDEX
フレイルとは、虚弱や老衰を意味する英単語「Frailty(フレイルティ)」が語源。加齢などが原因で運動機能や認知機能などが低下した状態のことをいいます。「要介護状態になる手前の状態であり、心身の脆弱性が見られ、健康とはいえないフェーズ」と考えるとわかりやすいでしょう。将来的に要介護になる可能性が高いだけでなく、健康な状態よりも入院リスクや寝たきりになるリスクも高い危険な段階です。
ただし、フレイルは早期に気づいて改善に取り組めば、健康な状態に戻すことが可能。そして再びフレイルにならないよう、フレイル予防を行うことも重要です。自分には関係ないと思わず、ぜひ早い段階からフレイル予防に取り組みたいものです。
そんなフレイルには以下の3つの側面があり、これらは互いに深く影響を与え合います。多角的に捉えて対策を講じていくことが重要です。
身体機能の低下によって、運動や摂食・嚥下などに支障が出る
認知機能や判断力、意欲の低下や抑うつの症状などが見られる
社会との接点が減り、閉じこもりや孤立してしまうなど
フレイルの評価基準はさまざまにありますが、国際的に用いられているのが、アメリカのLinda Fried(リンダ・フリード)氏らが提唱した以下の5つの項目です。
1.体重減少
2.疲れやすい
3.歩行速度の低下
4.握力(筋力・筋肉量)の低下
5.身体活動量の低下
上記の5項目のうち、3項目以上に該当する場合は「フレイル」、1~2項目該当する場合はフレイルの前段階である「プレフレイル」と判断されます。
また、フレイルには精神的要因や社会的要因もあることから、気力の低下や社会的活動の減少なども気をつけたいポイントです。
近年、フレイルだけでなく、「サルコペニア」や「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」という言葉も見聞きする機会が増えていることと思います。これらは、フレイルとの関連がとても深いため、併せて概要をご紹介します。
サルコペニアとは、加齢や疾患によって筋肉量が減少、および筋力が低下することです。これにより身体機能が衰え、歩行に支障が出たり、転倒しやすくなったりといったトラブルが起きやすくなります。サルコペニアの原因としては、摂取エネルギーの不足や栄養バランスの偏り、身体活動量の少ない生活などが挙げられます。
ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、運動器(筋力・関節・骨など)の機能の低下により、立つ、歩くといった移動に支障をきたしている状態のことです。移動機能低下の原因としては、筋力低下や、変形性膝関節症や骨粗しょう症といった関節と骨の疾患などが挙げられます。
先にご紹介したサルコペニアは筋肉量が低下した状態をさすため、ロコモはサルコペニアを含む、より幅広い概念となります。フレイルは、そのロコモを含むさらに大きな概念ということです。
先述のとおり、フレイルは正しい対策を講じれば、改善することができます。しかし一方で、何も対策をしないと「フレイルサイクル」と呼ばれる悪循環に陥りやすく、状態が悪化してしまう可能性があるのです。
フレイルサイクルとは、具体的には以下のような連鎖のことをいいます。
1.加齢や疾病が原因で食欲不振になる
2.食事で十分な栄養を摂れなくなり(低栄養状態)、体重も減少する
3.筋肉量や筋力が低下する(サルコペニア)
4.疲れやすくなり、歩くのが遅くなったり動きたくなくなったりする(運動量が減る)
5.筋力が落ちて基礎代謝量が減り、運動不足によりエネルギーも消費されない
6.さらに食欲がわかなくなる
フレイルサイクルに陥ってしまうと、健康な心身に戻すのがどんどん難しくなってしまいます。少しでも早い段階で対策を講じることが重要です。
フレイルは、生活習慣の改善やからだの状態を観察する習慣をつけることで、予防や改善につながります。早めの対策がとても重要なので、すでにフレイルの進行を感じている方はもちろん、今は健康状態に問題がない方もぜひ意識してみてください。
ここでは、基本的なフレイル対策をご紹介します。
エネルギーをきちんと消費し、食事を楽しんで十分な栄養を摂取する。そんな健やかなからだを維持するには、運動習慣をつけ、筋力を維持することが必要です。無理のない範囲で、日常的にからだを動かしましょう。たとえば、早歩きや大股歩きを取り入れたウォーキング、筋肉に負荷をかけるトレーニングなどが効果的です。
また、サークル活動やボランティアなど、社会的なつながりを積極的につくることもおすすめです。外に出かける機会が増えれば、自然と運動量も増えるでしょう。さらに、社会参加は心の健康づくりという観点でもメリットが大きく、多角的なフレイル対策につながります。
運動で心身を良い状態に整え、健康寿命を延ばしましょう。
栄養不足は、フレイルを招く原因のひとつ。筋肉量が低下したり、骨が脆くなってしまったりといった問題を引き起こします。健康な状態を維持するために、栄養バランスの良い食事をしっかり摂るように心がけてください。
とはいっても、若い頃と同じ量や品数の食事を摂り続けるのはなかなか難しいもの。その場合は、摂取する栄養素を意識するといいでしょう。具体的には、筋肉や骨の衰えの予防に役立つ「タンパク質」「カルシウム」「ビタミンD」を多めに摂ることを心掛けてください。
また、年齢を重ねてもきちんと食べるためには、口腔ケアをしっかり行うことも重要です。「口腔機能の衰え=オーラルフレイル」予防にも力を入れてくださいね。
ここまで見てきたとおり、フレイルは予防や改善ができます。そのためには、からだの変化を見逃さず、早いうちに気づいて正しく対策をとることが大切です。
そこでタニタがおすすめしたいのは、「はかる」こと。皆さんはご自身の半年前の体重を知っていますか?直近の数カ月間で、ご自身のからだに変化があったのか、それがどのように変わったか分かるでしょうか。
体組成計で体重や体脂肪率、筋肉量などを日頃から計測していれば、からだの変化に気づきやすくなります。ぜひ体組成計でからだをはかって、記録してみてください。
些細な変化にもすぐに気づいて、きちんと対策を講じる。そういうサイクルをつくれれば、健康な状態を維持しやすくなるでしょう。
フレイルが進行すると、要介護や入院するリスクが高くなります。しかし、早期に発見し、正しく対処すれば、健康な状態に戻すことができます。重要なのは、日頃から意識しておくこと。ぜひこれを機に、毎日の食事や運動習慣を見直してみてくださいね。
また、タニタが考案した「STOP!フレイル健康体操」は、「有酸素運動」「筋トレ」「バランス運動」「有酸素×脳トレ」の4種類のプログラムで構成されており、加齢によるからだや認知機能の衰えといった対策に効果があります。日常の運動のひとつとして、ぜひ取り入れてみてください。
また、フレイルについては、以下のページでも詳しくご紹介しています。
併せてご覧ください。
株式会社タニタ 開発部 佐野あゆみ
2011年タニタに入社。体組成計に搭載する新指標の作成を担当するほか、新規生体センシング技術を利用した新商品の開発に従事。医療機関や他企業との共同研究を活発に行いながら、お客様の声を商品開発に活かせるように日々心掛けている。
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