運動

そのプランク、効いてないかも! 本当に効果のある体幹トレーニングって?

2023.10.20

トレーニングを始めてみたものの、思うように筋肉がつかない……。そんなお悩みを抱えているみなさん、「なんとなく効きそうだから」「手軽で簡単だから」とプランクばかりやっていませんか? でも実は、プランクは筋肉を鍛えるためには効果が薄いことがわかっているんです。 今回は、開発部で新商品のアルゴリズム開発やプロアスリート支援を担当する佐藤が、タニタが考える「本当に効果のある体幹トレーニング」を解説します。

プロフィール

株式会社タニタ 開発部 生体科学課 佐藤 航大
2021年入社。おもに新商品のアルゴリズム開発を担当。また、学生時代はスポーツ科学を専攻。CSCS*保有。その知識を活かし、プロサッカーチームやプロバスケットボールチームなど、さまざまな競技のアスリート支援に関する業務も担当している。

 

*CSCS(Certified Strength and Conditioning Specialist)…傷害予防とスポーツパフォーマンス向上を目的とした、安全で効果的なトレーニングプログラムを計画・実行する知識と技能を有する人材を認定する資格


筋肉の動きの種類

なぜ「プランク」にあまり効果がないのか、どんなトレーニングをすると効果的なのかについてご説明するにあたり、まず知ってほしいのが「筋肉の動きの種類」。筋肉の動き方は、大きく以下の3種類に分けられます。

 

(1)筋肉が縮む動き(短縮性筋活動)
(2)筋肉が伸びる動き(伸長性筋活動)
(3)静止した状態を保つ(等尺性筋活動)

 

(1)は、力を入れたときに筋肉が「縮む方向」に動く運動。たとえば、腕を伸ばした状態でダンベルを持ち、肘を曲げる動きがこれにあたります。(2)は(1)の逆で、筋肉が「伸びる方向」に動く運動。ダンベルを持って肘を曲げた状態から、腕の力を抜かずに伸ばす動きです。

基本的には(1)は「ものを上げる」動き、(2)は「ものを下ろす」動きと考えるとわかりやすいです。
そして(3)は、筋肉が静止したまま力を発揮している状態。プランクやバックブリッジがこれにあたります。

 

この3種類のなかで、筋肉を鍛えて大きくするために効果的だと言われているのが、
(1)筋肉が縮む動き(短縮性筋活動)
(2)筋肉が伸びる動き(伸長性筋活動)
の2つです。


体幹トレーニングを行うメリット

これまで「プランク」を行った経験がある方の多くは、お腹まわりの筋肉をはじめ、体幹を鍛えたいと考えていることでしょう。みなさんもご存じのとおり、体幹トレーニングには多くのメリットがあります。

体幹トレーニングの基礎知識

体幹というのは、頭と四肢を除く胴の部分のこと。体幹部分を動かす筋肉を集中的に鍛えるトレーニングが、体幹トレーニングです。
競技の種類を問わず、多くのアスリートが体幹トレーニングを強化するのは四肢を動かすための「土台」となるのが体幹だから。スポーツにおける多くの手足の動作は、初めに体幹の筋肉が活動して肩や股関節を動かし、それに末端が連動して成り立ちます。手足の動作で高いパフォーマンスを発揮するために、体幹の強さは欠かせません。

体幹トレーニングは健康維持に重要

体幹を鍛えることは、健康維持のためにもとても重要です。なぜなら、体幹の筋肉が衰えると、からだを大きく動かしにくくなるからです。


たとえば歩く際は、股関節をうまく動かせないことで歩行フォームが崩れ、膝への負担につながります。また、体幹にある姿勢を維持する筋肉(脊柱起立筋)が衰えると、背中が丸まりやすくなり、将来的に腰が大きく曲がってしまう可能性があります。
そうやってからだを傷めると、運動量はどうしても減少傾向に……。最終的には、サルコペニアになるリスクも上昇します。長く健康を維持していくためには、ぜひ若いうちから体幹の筋肉に着目してください。


効果抜群! おすすめの体幹トレーニング5選

筋肉量を維持したり増やしたりするには、冒頭でご説明したとおり筋肉が「縮む動き」と「伸ばす動き」が含まれるトレーニングが適しています。

具体的には、以下の5つの体幹トレーニングを、各10回×3セットを目安に行ってください。ただし、こなせる回数は現在からだの状態に左右されるので、数字にとらわれずご自身が「キツい」と感じるまでで大丈夫です。

 

また、同じ箇所の筋肉を鍛えるときは、少なくとも2日間のインターバルを設けてください。そのため、毎日5つのメニューすべてを行う必要はありません。メニューをローテーションしながら取り組んでください。

おすすめの体幹トレーニング 1:クランチ

仰向けに寝た状態で膝と股関節を直角に曲げ、上体を上げ下げするトレーニングです。

  • 上体を上げるときは背中を丸め、上げ下げの動作をできるだけ大きくする。下ろす動きはゆっくりと。
  • 腹筋上部に刺激を与えられていると感じればOK。
  • 上体を上げる際に膝をお腹に引き寄せるようにすると、腹筋下部にも刺激を与えられる。

おすすめの体幹トレーニング 2:レッグレイズ

イスに座り、脚を上げ下げするトレーニングです。

  • 脚の上げ下げはできるだけ大きく、下ろすときはゆっくりと。
  • 腹筋下部に刺激を与えられていると感じればOK。

おすすめの体幹トレーニング 3:デクラインシットアップ

角度がついたベンチを使ったシットアップです。

  • ベンチを使って角度をつけることで、普段より広い範囲で最大限に、腹筋に刺激を与えられる。
  • 上体を下ろすときはゆっくりと。

おすすめの体幹トレーニング 4:バックエクステンション

ローマンチェアを用いたバックエクステンションです。

  • ローマンチェアを使うことで、上体をより大きく上げ下げできる。
  • 上体を上げるときに肩甲骨を寄せると、背中をより伸ばせる。
  • 上体を下ろすときはゆっくりと。

おすすめの体幹トレーニング 5:バックアーチ

床でうつ伏せになった状態から上体を上げ下げするトレーニングです。

  • 手のひらを床に向けたままからだの横で少し浮かせ、同時につま先も浮かせる。
  • 上体を上げるときは手のひらを外に向けて肩甲骨を寄せ、つま先もできるだけ高く上げる。

「プランク」が体幹トレーニングに効果的だと思われている理由

ここまでにお話したとおり、筋肉を大きくするには、「筋肉を伸縮させる運動」が重要です。

体幹トレーニングとしてよく知られるプランクは、実は筋肉を鍛えるには不向き。筋肉が静止した状態で力を発揮する運動は、筋力をはかる評価方法として使われることはありますが、トレーニングには適していません。

 

プランクがこれだけ広く浸透したのは、体幹を鍛える重要性が注目されはじめたときに、「体幹を固定する動きが効くのでは」というイメージが広まったことが理由と考えられます。

しかし、筋力トレーニングとしては生理学的に効果が薄いとわかっているので、筋肉を鍛えるという観点からは上記のような筋肉を動かすトレーニングをおすすめします。


日常生活で意識したいこと

体幹の状態を悪化させないために、日常生活のなかでは正しい姿勢を意識するようにしましょう。

重力に負けないように姿勢を保持している「脊柱起立筋」という筋肉は、加齢に伴って衰えやすく、腰が丸まる原因となります。できるだけ姿勢を正すよう努め、その衰えを食い止めてください。思い出したときに姿勢を正すだけでも、意識しないよりずっといいですよ!

 

ただ、日常生活の工夫だけで筋肉量を維持・向上するのは、やはり難しいもの。無理のない範囲で構わないので、今回ご紹介した筋トレをぜひ習慣にしてください。

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  • 本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。内容は予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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