睡眠
2023.08.02
「ダイエットしようと思っても、つい食欲に負けてしまう」「いつも疲れていて、健康に自信がない」。 その原因は、もしかすると睡眠の不足にあるかもしれません。睡眠が健康に与える影響は多くの人が考えているよりもずっと大きく、肥満やパフォーマンスの低下にもつながることが明らかになっています。 今回は、そんな睡眠と健康の関係にまつわる疑問に、上級睡眠健康指導士の資格をもつ開発部の藤井がお答えします。
INDEX
株式会社タニタ 開発部 藤井 美結
2022年入社。学生時代は、睡眠を卒業研究のテーマに選択。仮眠と認知機能の関係について研究した。その知識を活かすべくタニタに入社し、現在は睡眠計の企画も担当。日々、さまざまな実験結果や体組成データの解析と考察にあたっている。2023年には上級睡眠健康指導士の資格も取得した。
成人に必要な睡眠時間は、約7~9時間。この時間幅を基準に、自分に合った睡眠時間を見つけ、できるだけ毎日その時間だけ眠るのが理想です。
「自分に合った睡眠時間」とは、朝起きたときに疲れが残っていたり、日中に強い眠気を感じたりしない状態までからだを回復できる時間のこと。睡眠時間と1日の体調の関係をよく観察して、ベストな長さを見つけてみてください。
ちなみに、7~9時間「まとめて寝る」ことも重要です。人は一晩の眠りの中で、ノンレム睡眠とレム睡眠という異なる役割をもった眠りを繰り返します。
なお、ノンレム睡眠には深いノンレム睡眠と浅いノンレム睡眠があり、寝始めに深いノンレム睡眠が現れるといわれています。このときに成長ホルモンがたくさん分泌されるため、からだを回復・成長させるためにとても重要です。
ノンレム睡眠とレム睡眠はどちらも大切な役割をもち、どちらも十分にとらなければなりません。それを叶えるためには、細切れではなく、まとめて寝る必要があります。
「平日は忙しくて十分な睡眠時間を確保できないから、休日にたくさん寝るようにしている」という話を耳にすることがあります。そうしたくなる気持ちはわかりますが、残念ながら1度の長い睡眠では慢性的な寝不足を補えません。つまり、「寝だめ」はできないということです。
また、リカバリーができないだけでなく、かえって体内時計が狂い「時差ボケ」のような状態を招いてしまうので注意が必要です。
具体的には、以下のような不調が生じます。
たくさん寝たその日だけは元気になることもあるかもしれませんが、長い目で見ると、からだにとってはマイナスなんです。休日も平日より少し遅いくらいの時間には起きて、太陽光を浴び、朝食を食べ、生活のリズムを崩さないようにしてください。
どうしても眠いときは、そのあとにもう一度仮眠をとるようにします。15~20分程度の仮眠を16時頃までにとれば、リズムが崩れる心配もありません。
毎日の起床時間の差を2時間以内にとどめ、起床時間と就寝時間を一定に保つよう意識しましょう。
睡眠時間が不足したり、まとまった睡眠時間がとれていなかったりすると、食欲にかかわるホルモン分泌に異常をきたします。
具体的には、「食欲抑制ホルモン(レプチン:満腹中枢を刺激して食欲を抑制したり、エネルギー代謝を活性化したりする)」の分泌量が減り、反対に「食欲増進ホルモン(グレリン:食欲を増進させ、脂肪蓄積を促す)」が増加。
これによって、からだが必要としている以上に食べてしまい、肥満につながるのです。
その結果、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクも上昇します。
睡眠不足は、精神的に不安定になってイライラしやすくなったり、注意力や集中力が低下したりとさまざまなからだの不調につながります。認知症の発症リスクが上がることもわかっています。
最近どうも食欲が増して食べ過ぎてしまう、なんだか気持ちが落ち着かない、イライラしやすくなった……。そんな変化を感じたときは、睡眠不足を疑ってみてください。
運動によって寝つきがよくなったりより深い睡眠が得られるようになったりすると言われています。
もちろん日中の運動もよいのですが、更に良い睡眠につなげたいのであれば、夕方がおすすめ。
私たちのからだには「深部体温が下がるにつれて眠くなる」メカニズムが備わっているので、就寝の3時間ほど前に有酸素運動を20~60分行って体温を上げると、スムーズな入眠をサポートできます。運動で上がった体温が時間とともに低下していく中で、覚醒度が徐々に下がって眠くなる仕組みですね。
有酸素運動の強度は、少し息が上がり、体温が上昇するのを感じられる程度を目安にしてください。具体的には、早足の散歩や軽いランニングなどが挙げられます。
また、就寝3時間前の運動は「習慣的に行う」ことが効果を実感しやすくなる最大のポイントです。週2~3回を目安に行うと、良い入眠リズムをつくれます。
反対に注意してほしいのは、運動するタイミング。就寝直前に運動すると、体温が上がって交感神経も活発化し、覚醒状態になってしまいます。
運動が難しい日は湯船につかってゆっくりするのも、深部体温を上げることにつながるのでおすすめです。
「毎日忙しくてなかなか睡眠時間を増やせない!」という方は、以下のような方法で「睡眠の質」を少しでも上げることを目指してみてはいかがでしょうか。
明るい場所にいると、生体リズムを整えて入眠を促す「メラトニン」というホルモンの分泌が抑制されてしまいます。間接照明や、オレンジの電球色の照明を使って部屋を少し暗くすると、就寝モードに入りやすくなります。
寝室の電気は全て消すのが理想。少しの光でも、メラトニンの分泌が抑えられてしまい、質の高い睡眠の妨げとなります。
PCやスマホの画面の光に含まれるブルーライトは眠りの妨げになります。また、画面に集中することで交感神経が活発になり、眠りにつきづらくなってしまいます。
カフェインには覚醒作用があり、4~5時間持続するため寝つきにくくなります。
そして、生活リズムを一定にすることを意識します。夜寝る時間が遅くなったとしても起きる時間は固定して、起床後は太陽光を浴び、朝食を食べる習慣をつけるよう心がけてください。
そして、日中に眠気でパフォーマンスが低下していると感じたら、潔く短い仮眠(16時頃までに、15~20分程度)をとってリカバリーするといいですよ。
睡眠は、からだを健やかに保つために必要不可欠な休養であり、また生活リズムをつくるものでもあります。
健康習慣は「サイクル」でできあがっているので、上手に睡眠をとれるようになれば、からだ全体がいい方向に変わっていくはずです。
とはいっても、今日までの生活をいきなり変えるのは難しいもの。私も照明の調節をしたり、忙しいときも深夜ではなく早朝に作業したりと工夫はしていますが、寝る前のスマホはなかなかやめられません(笑)。
この記事を読んでくださった方も、最初からパーフェクトを目指そうとせず、自分にできそうなことから変えていってもらえたらと思います。そうして、少しずつ「いい健康サイクル」をつくっていってください!
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