PRODUCT STORY
2023.07.07
タニタは、食事量を計量・記録することでアスリートの減量をサポートするポケッタブルスケール「GRAMIL(グラミル)」KP-130Lを2023年3月に発売しました。 タニタの標準的なクッキングスケールに比べ約3分の1の厚さで、サイズは約5分の1と超コンパクト化し、世界最薄となる厚さ8mmを実現*1。 持ち運びやすさを追求し、あらゆるシーンで摂取した食事量を手軽に計量できるほか、専用のスマートフォンアプリで食事や水分の摂取量を記録し、体重とあわせて管理することができます。 今回は「GRAMIL」の開発を担当したふたりに、商品に込められた熱い想いを聞きました。
INDEX
株式会社タニタ 開発部 商品開発課 市原 聖也
2017年入社。開発部に所属し、クッキングスケールや体重計などのセンサー開発、筐体(きょうたい)設計に従事する。直近では、「ポケッタブルスケール GRAMIL KP-130L」の開発を担当。プライベートではアマチュアボクシングに取り組んだことがあり、過去にはハードな減量に挑戦したことも。その経験が「GRAMIL」の開発にも生きている。
株式会社タニタ秋田 技術部 山田 裕之
1998年入社。技術部に所属し、要素技術の開発や重量センサーの設計、湿度センサーの設計のほか、製品設計にも携わる。センサーを使った商品に関わることが多い一方で、近年はこれまでにない商品の量産化などをメインにおこなっている。市原とともに新構造となる「GRAMIL」開発の中心となる。
山田:
ざっくり言うと、クッキングスケールは荷重によって生じる“ひずみ”をセンサーが感知することで、重さをはかっています。タニタのクッキングスケールは、通常センサーをひとつ搭載しており、製品にかかる荷重をこのひとつのセンサーが感知して重さを表示しています。
このセンサーは最低でも厚みが1cmくらいとなり、センサーにかぶせる筐体部分を含めると、製品の厚みはどうしても2㎝近くになってしまいます。
一方、「GRAMIL」は世界最薄を目指していたため、小型化した薄いセンサーを4つ使い、これらを製品の四隅において荷重を分散させる方式を採用し、製品全体の薄型化をはかる方向になりました。
山田:
もともと、タニタのコア技術を磨いて技術力を対外的にアピールするため、薄型化に注力しようという動きがありました。ただ、ひとことで“薄型化”といっても、そう簡単にできるものではなく、なかなか超えられない技術的なハードルがいくつかありました。そのうちのひとつがセンサーでした。
そして、センサーが完成しても、筐体とセットでないと商品として世の中には出せません。
「GRAMIL」の場合、センサーの開発だけで3~4年かかっていますが、商品化が決まってからもなお、センサーの改良が必要でした。筐体部分が厚くなるとセンサーをさらに薄くする必要があるなど試行錯誤の日々でした。
例えば、筐体が非常に薄いため、計量する食事の温度が筐体内部のセンサーに伝わりやすく、正しく計量できない問題がありました。センサーに温度が伝わるとひずみを検知する部分が狂ってしまう事が原因でしたが、これを解消するために、受けた熱の影響を低減するような構成に改良しました。
市原:
筐体の開発と商品化までに2年くらいかかっているので、「GRAMIL」の開発はセンサーと筐体であわせて丸6年かかっている計算になります。
私は2017年に新卒で入社したのですが、入社直後から6年間ずっと、山田さんと一緒に開発に取り組みました。私にはかりの基本を教えてくれたのは山田さんです。
今回の目標がセンサーの最薄ではなく「製品としての最薄」だったので、センサーが薄いだけでは成立しません。
筐体とセットで検討して、改良して…を繰り返して、現在搭載しているセンサーは8代目…細かい変更なども入れると10代目くらいですね。
▲秋田工場にて。ふたりの話を聞いていると、たくさんの困難を乗り越えてきたことが伝わってきます
山田:
「GRAMIL」のセンサーを開発すると決まったとき、上長からは「(技術的に難しいから)やめておけ」と言われました。センサーの開発ってそれくらい難しいことなんです。
しかし私は難しいことのほうがおもしろいと思う性格。「やりたいです」と押し切って担当させてもらいました。
…と、そこまではよかったのですが、実際の開発は想定していた倍くらいの時間がかかりました。ちょっと進んだら、また戻るの繰り返しで、だんだんしんどくなってきていましたね。市原さんがいなかったら辞めていたかもしれません。若い人が頑張っているから、私もここまで頑張れたのだと思います。
市原さんにはぜひ、次世代に引き継いでもらいたいですね。
市原:
タニタ秋田の試作室で、ふたりでああでもない、こうでもないと言いながらセンサーの試作をしたのも、今となってはいい思い出です。
私たちのなかでは「もう少しでできそうだな」という手ごたえはあったのですが、センサーを開発しているときは周りから「できるの?」と言われ、商品化が決まってコンセプトが固まると、次は「売れるの?」と。しかしデザインが決まってかたちになると「いいね」という反応になって、風向きが変わりました。
たくさん困難もありましたが、結果的にどこにもないスケールが誕生しました。
山田:
周りから「かっこいいね」と言われるとうれしいです。でも、いざ完成すると「もっとできただろうな」と欲が出てくるんですよね(笑)。
市原:
今回は使用するシーンを想定して、人前で“見せる”ことを意識したデザインにしています。
筐体の色を黒にしてスタイリッシュにしているほか、アクリル板の面取りなど、細かい部分までこだわりました。
タッチスイッチを採用していますが、4つのボタンのなかにどんな要素を入れるかはこだわりました。
あと…細かいですが、薄くしたぶん持ちあげづらくならないよう、指の先でつかみやすいように側面を凹ませています。
▲持ち上げやすく凹ませた側面
山田:
デザイン面のこだわりがあったので、製造面も工夫が必要でした。製造工程では通常のタニタの商品ではできないような工程をたくさん入れており、職人技ともいえる技術が必要です。
市原:
金属の筐体はひとつひとつ切削加工をしていますし、側面のくぼみのヘアライン*2の部分は手作業で磨いていますし…目の細かさも何パターンも試作してこのかたちになりました。
▲秋田工場で切削している様子
山田:
「GRAMIL」は部品のほとんどが秋田工場でつくられています。
また組み立ての工程は、通常の商品では1台が組みあがるのに5~10分で完成しますが、この商品は40分かかります。製造中も本体を傷つけてはいけないので、組み立ての担当者にもかなり慎重に扱ってもらっていますし、たくさんの工数をかけて製造しています。
タニタでもここまでこだわった商品はありません。
▲手作業でヘアライン加工をしている様子
市原:
通常のクッキングスケールよりも値段は高いのですが、満足してもらえる商品だと思っているので、ぜひ一度、手に取ってご覧ください。減量しているけど管理がうまくいっていない、悩みをもっているアスリートに使ってほしいです。
もうお使いいただいている人には、「こんな機能がほしい」といったリクエストやフィードバックもお待ちしています。
山田:
はかりとしての性能をしっかり作りこんでいるので、高い精度にタニタらしさが出ていると実感いただけると思います。
携帯できることが特徴の商品ですが、薄くて軽いからといって、ちょっと落としたくらいでは壊れないくらいの耐久性には自信があります。安心して使ってください!
合同会社サウザンスマイルズ
タニタのグループ会社。社名にもなっている「もうあと1000人を笑顔に」という理念のもと、主要スクリーンリーダーにも対応したウェブサイトの運営やモジュールの開発などを行っています。
サウザンスマイルズ ウェブサイト:
https://www.thousands-miles.com/
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