PRODUCT STORY
2023.07.11
気温が上がってくると気になるのが熱中症。夏場は特に、メディアでも毎日のように熱中症関連のニュースが取り上げられています。こまめに水分補給をすることや適度に塩分を摂ることなどのほかに、「いま自分がいる場所の熱中症の危険度を知る」ことも熱中症予防には有効です。 そこで今回は、タニタで販売している「黒球式熱中アラーム」の開発担当者にその仕組みについてインタビューしました。
INDEX
株式会社タニタ 量産設計部 森 遥香
2019年入社。入社以来、熱中アラームを担当。主に新製品の仕様の検討や製造に関することのほか、データ解析なども行う。家庭用熱中アラームTC-210にはじまり、現在は業務用の熱中アラームを担当。近年は熱中症の予防啓発のため、教育機関向けの講演やセミナーも行っている。
株式会社タニタ 量産設計部 山谷 千秋
2008年入社。入社当初は睡眠計の開発をメインで担当。コンディションセンサーTC-400や熱中アラームTC-300の開発に携わる。アルゴリズムや推定式の開発、データ分析、アプリの開発など、これまで担当した分野は多岐にわたる。
山谷:
温度計は外気の温度のみ、温湿度計は温度に加えて湿度もはかれます。一方で、熱中アラームは気温、湿度、黒球温度の3つの要素が入っていることが特徴です。
もう少し詳しく説明すると、黒球式熱中アラームにはご覧のとおり製品の上部に「黒球(こっきゅう)」という黒い球がついており、黒球温度と気温の差(輻射熱)をはかっています。輻射熱は太陽の日差しの強さや地面からの照り返しの強さをあらわすもので、この輻射熱を利用して、暑さ指数を出しています。
温度計、温湿度計、熱中アラームのうち、屋外で暑さ指数をはかれるのは熱中アラームだけです。
“暑さ指数”がわかることによって、熱中症の危険度がわかります。最近では夏になるとテレビなどの天気予報でも「熱中症警戒レベル」や「熱中症警戒アラート」が発表されていますが、それもこの“暑さ指数”を基に計算されています。
ちなみにWBGTも温度も単位は同じ「℃」で混同しやすいですが、このふたつは全く異なるものを示しています。
▲熱中アラームの上部の黒い部分が黒球にあたる
山谷:
私は業務用商品のTC-300から熱中アラームの開発に携わっていますが、もともとアルゴリズムの開発を担当していたこともあり、熱中アラームは実験で得られたデータの分析から担当しました。
暑さ指数はもともと直径150mmの金属の球体ではかるものでこれが基準となりますが、製品に搭載するには大きすぎるので、小さい黒球でもこれに匹敵するような推定式を開発するところからスタートしました。今でもこの式の精度を確かめることがありますが、しっかり基準値と一致しているので、その精度は折り紙つきです。
熱中アラームの開発は年間を通して動いていますが、実験ができるのは日差しの強い、いわゆる“暑い季節”のみです。そのため沖縄まで行って実験したこともありました。
そんなこともあって、最近は5月ごろ気温が高くなりはじめると「熱中アラームの季節が来たな」と思うようになりました。朝、出社して森さんと「今日は暑いね(熱中アラーム日和だね)」とコードネームのように話すのが日課となっています(笑)。
森:
私は一般家庭用の黒球式熱中アラームTC-210の開発から熱中アラームに携わっています。もともと業務用の熱中アラームが先行して販売されており、一般家庭向けの商品を出すことになったタイミングで担当しました。
当社として初の一般家庭用の商品だったため、熱中アラームになじみの薄い人に対しても手に取りやすい商品にする必要がありました。そこで、これまでの熱中アラームにあった「暑さ指数」「気温」「湿度」の表示に加えて、新たに日焼けまでの時間を示す「日焼けアラーム機能」を発案して実装しました。
森:
「日焼けアラーム機能」は日焼けが始まるまでの時間を「あと20分」というようにカウントダウン表示する機能です。
TC-210もほかの業務用商品と同じく黒球がついていますが、この黒球温度と気温の差が大きくなると日射が強くなり、紫外線レベルも高くなります。紫外線レベルが高くなると日焼けしやすくなるため、黒球温度と気温の差分を利用したのが「日焼けアラーム機能」です。
本体表示のほかに音でも知らせ、直感的にわかるようにしています。
▲TC-210の日焼けアラーム機能
山谷:
まず、据え置きではなく、持ち運びができることです。
たとえ熱中症警戒アラートが発表されていない日でも、今、自分がいる場所が必ずしも安全とは限りません。地面がアスファルトか芝生によっても照り返しの強さが異なりますし、熱中症は室内でも起きると言われています。
屋内か屋外かにかかわらず、今、自分がいる場所の熱中症の危険度を把握することが、熱中症予防につながる第一歩となります。
▲カラビナがついているので、ベビーカーなどにも取り付け可能
山谷:
ほかには、屋内と屋外を自動で切り替えることができる(※特許技術)のはタニタならではだと思います。
熱中症においては温度や湿度だけではわからない部分が多いため、夏のリスク対策にはやはり熱中アラームの使用をおすすめしたいです。
森:
一般家庭向けにはわかりやすさを重視し、顔のイラストで熱中症の危険度を表示しています。
同じ熱中アラームでも商品によって表示方法は異なりますが、使用する人にとってわかりやすく伝わるように工夫をしています。
▲顔の表情でわかるようになっている(TC-210)
山谷:
幼少期、まだ熱中症という言葉がこれほど認知されていなかった頃、身内が暑さで倒れたことがありました。
熱中症は老若男女問わず誰にでも起こりうることです。
その一方で、熱中症は正しい知識を身に着けておけば予防できるといわれています。個々人でできることはたくさんありますが、まずは自分の身の回りをはかるところからはじめてほしいと思っています。
森:
新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことにより、外出の機会がこれまで以上に増えることが予想されます。加えて、熱中症は梅雨明けから増えていくため、これから特に熱中症に気をつけていただきたいと思います。熱中症対策にぜひ熱中アラームをご活用ください。
合同会社サウザンスマイルズ
タニタのグループ会社。社名にもなっている「もうあと1000人を笑顔に」という理念のもと、主要スクリーンリーダーにも対応したウェブサイトの運営やモジュールの開発などを行っています。
サウザンスマイルズ ウェブサイト:
https://www.thousands-miles.com/
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