運動
2024.03.21
スポーツやトレーニングに取り組んでいるみなさんは、日頃から筋肉量をチェックしていることと思います。では、「筋肉の質」を意識している方はどれくらいいらっしゃるでしょうか? タニタでは、効果的なからだづくりのためには、筋肉量と筋質の両方に着目する必要があると考えています。今回は、筋質が重要な指標である理由や、その活用方法などを、「筋質点数の生みの親」である開発部の内山がご説明します。
株式会社タニタ 開発部 生体科学課 内山 朋香
2007年入社。国の難病研究に協力する中で「筋肉の質」の評価に着目するようになり、「筋質点数」を立案・開発。4C法(からだを脂肪、ミネラル、たんぱく質、水分の4成分に分けて推定する方法)を基準とした体組成推定式の開発をはじめ、長年にわたってBIA(生体電気インピーダンス法)技術を中心とした研究開発を行ってきた。現在も、BIA技術を活かした商品開発に従事している。
筋肉の質、すなわち筋質とは、「筋線維の密度」に関連する指標のこと。筋肉は、「筋線維」と「筋線維をとりまく組織(水分や脂肪、結合組織)」でできており、筋線維の密度によって筋質が変化します。
また、筋質点数とは、筋線維の密度を0~100点で評価した指標のことです。筋線維が密な状態だと点数が高く、炎症やむくみなどを含め、筋線維以外の割合が増えた場合には点数が低くなります。
からだづくりに取り組むにあたって「筋肉量」を気にする方は多くいらっしゃいますが、その数値は筋線維以外もすべて含む“筋肉の総量”を示すもの。筋肉の状態や筋線維の変化を捉える数値ではありません。
つまり、筋肉量の数値の上昇を見てすぐに“筋線維が太くなった” “トレーニングの効果が出ている”と考えるのは早計である可能性も。むくみや血液量の増加(筋線維以外の増加)によって数値が上昇していることもあります。
からだを動かす際に「使える筋肉」がどのような状態であるかをより正確に把握するためには、筋肉量に加えて筋質点数も確認するのがおすすめです。
タニタの体組成計では、筋肉量は50g単位もしくは100g単位ではかるため、筋肉量としてトレーニングの結果が数字に表れるまでに少し時間がかかります。一方で、筋質点数はすぐに変化するのが特徴。トレーニングを行って筋肉に炎症が起こると一時的に点数の低下が見られるほど、数値が細かく変動します。
一日の中で点数が上下しながらも、正しい方法でからだづくりを継続していると、「平均値」が着実に上昇していきます。もともと運動習慣がない方がトレーニングをはじめた場合では、個人差はあるものの、一週間程度で平均値の変化を確認できることが多いです。
筋肉の変化が詳細に反映される筋質点数は、環境やからだの状態の影響を受けやすい指標です。
たとえば、疲れてむくみや炎症があるときは本来の値よりも低く、脱水や血流量の低下があるときは高く点数が算出されやすくなります。また、からだがむくみやすい夕方~夜の時間帯や月経前は点数が低下しやすいです。
毎日同じ時間帯に計測する習慣をつけたり、からだのリズムを考慮しながら数値を確認したりすると、推移を追いやすくなります。
タニタが筋質の評価に着目したきっかけは、国が取り組む難病研究に研究協力したこと。そこで患者さんの筋肉について研究する中で、変化を正しく評価するには、筋肉量だけではなく、“活動できる状態にある筋肉”を見極める必要があると考えました。
そして研究を重ね、この難病研究で培った知見を幅広い世代のからだの評価に適用できる形にしたのが「筋質点数」です。
筋質と筋肉量は、必ずしも比例するものではありません。
たとえば、肥満体型で運動習慣がない方の場合、筋肉量判定(「少ない」「標準」「多い」の3段階で評価されます)は「多い」に分類されることが多いです。
その理由は、筋肉量判定が「身長」に対しての評価だからです。
筋肉量は一般的に体重に比例して多くなるため、同じ性別・年齢・身長でも、「体重56kg・運動習慣がない標準体型の方」より「体重70kg・運動習慣がない肥満体型の方」のほうが、筋肉量は多くなります。
一方で筋質は、どちらの方も低い水準になるかもしれません。
これは、筋質は身長や体重に影響されるものではなく、筋線維の密度と関連する指標であるため。筋線維の密度は運動習慣がある方ほど高くなる傾向にあり、日頃からあまり運動していない両名は低くなると考えられます。
補足ですが、筋質は加齢とともに低下する傾向があります。このため、運動習慣がある高齢の方が、運動習慣のない若年者より低値となる場合もあります。
では、「日頃から運動している細身の方」の場合はどうなるでしょうか?
身長に対する筋肉量は少なくても、運動習慣があると、筋質点数は高くなる傾向があます。長距離走やヨガなどに取り組んでいる方に多く見られるケースです。
こうした「筋質と筋肉量のバランス」から、からだの状態のイメージを表すと以下の図のようになります。
一方、右側の五角形は、同じように短距離走選手と長距離走選手の筋質を比べた結果です。
筋肉量とは違い、筋質にはほとんど差がないことがわかります。
一定レベル以上のトレーニングをしているアスリートであれば、専門のスポーツによって筋肉量は異なっても筋質にはあまり差がなく、みなさん同じように高いことがわかっています。
筋肉量だけでなく筋質点数を見ながらトレーニングに取り組むと、筋肉の変化をより正確に理解しやすくなります。
たとえば、トレーニングをしているのに筋質点数が下がったときは、筋肉量を確認してください。筋質点数の低下と同時に筋肉量が増えていれば、負荷をかけたことで筋肉に炎症が起こっている状態、つまり一時的な筋質の低下だと推測できます。
逆に、筋肉量は下がったものの筋質点数が上がっているときは、筋肉から余分な水分が抜けている可能性が高いです。これは筋肉の成長が進んでいる傾向にあると判断できます。
このように筋肉量と筋質点数の両方を確認しながら、トレーニングのタイミングや部位、メニューなどをコントロールすると、より効果的なからだづくりができるはずです。
効果的なトレーニングを続ければ、点数は変動しながらも、平均値は着実に高まっていきます。その傾向が筋肉の成長を示す指標と考えてもらえたらと思います。
筋肉量だけでなく筋質点数を見ながらトレーニングに取り組むと、筋肉の変化をより正確に理解しやすくなります。
たとえば、トレーニングをしているのに筋質点数が下がったときは、筋肉量を確認してください。筋質点数の低下と同時に筋肉量が増えていれば、負荷をかけたことで筋肉に炎症が起こっている状態、つまり一時的な筋質の低下だと推測できます。
逆に、筋肉量は下がったものの筋質点数が上がっているときは、筋肉から余分な水分が抜けている可能性が高いです。これは筋肉の成長が進んでいる傾向にあると判断できます。
このように筋肉量と筋質点数の両方を確認しながら、トレーニングのタイミングや部位、メニューなどをコントロールすると、より効果的なからだづくりができるはずです。
効果的なトレーニングを続ければ、点数は変動しながらも、平均値は着実に高まっていきます。その傾向が筋肉の成長を示す指標と考えてもらえたらと思います。
タニタでは、筋質点数の活用の幅をさらに広げるべく、現在も研究を続けています。
みなさんのからだづくりをより力強くサポートできることを目指しているので、期待して待っていていただけたらうれしいです!
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