運動
2023.11.24
とくに女性に多い、「冷え」の悩み。からだの冷えはさまざまな要因によって起こりますが、実はそのひとつに「筋肉不足」があることをご存じですか? あなたの冷えが筋肉不足によるものであれば、運動習慣や食事を見直すことで改善できるかもしれません。 今回は開発部 生体科学課 課長の深山が、筋肉と冷えの関係性や、運動をとおして冷えにくいからだをつくる方法をご紹介します。
株式会社タニタ 開発部 生体科学課 課長 介護福祉士 深山 知子
からだの部位ごとの脂肪や筋肉をはかれる8電極体組成計の開発を担当。その後、子どもと女性を中心とした研究に従事。近年は脚の運動機能の状態をはかる機器の開発を行うなど、フレイルをはじめ高齢者を対象とした研究開発に取り組んでいる。
冷えの原因はさまざまですが、筋肉不足もそのひとつ。以下の内容に思い当たることはありますか? 当てはまると感じた方は筋肉量が少ないか、もしくは以前よりも筋肉量が減ってきたことでからだが冷えている可能性があります。
また、BMIや体脂肪率による判定で「痩せ」に分類される方も筋肉量が少ない傾向にあり、冷えを感じやすいといわれています。
「私の冷えは筋肉量が少ないせいかも?」と思ったら、ぜひ体組成計の筋肉量判定機能を活用してみてください。体組成計に乗るだけで、簡単に現在の筋肉量がわかります。
筋肉は、からだを動かすだけでなく「熱を生み出し、維持する」役割を担っています。熱は筋肉が収縮するときに生まれるので、生み出す熱の量は筋肉量に影響されます。筋肉が多いほど、たくさんの熱が生み出されるのです。
また、基礎代謝(じっとしていても生命維持のために消費されるエネルギー)も熱を発生させるからだの営みであり、基礎代謝量は筋肉量が多いほど大きくなるもの。つまり、「筋肉量が多いからだ=熱を生み出しやすいからだ=冷えを感じにくい」といえます。
一般的に冷えに悩む方に女性が多いのは、女性は男性よりも筋肉量が少ない傾向にあるから。
一方で、筋肉の量は性別を問わず加齢に伴って減少していくものです。そのため、男性も筋肉量が減少しやすくなる65歳以上になると、冷えを感じる方の割合が大きく上昇することがわかっています。
筋肉には熱をつくり維持する機能がありますが、生み出した熱を逃がさないようにするには脂肪が必要。
同じ筋肉量で脂肪量が少ない人と適正量の人を比較すると、適度に脂肪がついている人の方が冷えを感じにくくなります。筋肉を包むようにからだについた皮下脂肪は「天然のダウンコート」のような存在で、熱の放出を防いでくれます。
冷えの原因は、筋肉不足のほかにもさまざま。
不規則な生活やストレスによる自律神経の乱れ、皮膚感覚の鈍化、血流の悪化、女性ホルモンバランスの乱れなどがその一例で、複数の原因によって引き起こされているケースも珍しくありません。
また、治療が必要な病気が隠れていることも否定できないため、ひどい冷え、長く続く冷えに悩んでいる方は、一度、内科や婦人科で相談してみることをおすすめします。
筋肉不足による冷えを改善するため、ぜひ活動量アップに取り組んでください。
いきなり激しいトレーニングをしなくても大丈夫。筋肉をしっかり動かして、少しずつ大きくしていくことを目指します。
まずは歩く(歩数を増やす)、かつ早足で歩くこと、積極的に階段を使うこと、歯みがきや皿洗い中にかかと上げ運動をすること……こうした日常生活の中で無理なく実践できる運動、「ながら運動」から始めてみてください。
たとえば私は、買い物の際にはカートを使わず、自分でバスケットをもつように心がけています。
筋肉量を増やすには、可能であれば筋肉トレーニングにも取り組めるとベターです。
具体的には、スクワットや腹筋を行って、大きい筋肉を鍛えるのが効率的。基礎代謝量が上がりやすくなり、手足の末端を含めた全身の冷えの改善を目指せます。
さらに、特定の箇所の冷えに悩んでいる方は、その部分の筋肉を鍛えるのも効果的です。下半身が冷えるならスクワットを、腰回りならクランチ(仰向けに寝た状態で膝と股関節を直角に曲げ、上体を上げ下げする)などの体幹トレーニングを取り入れてみてください。
筋肉不足を改善するには、運動量を増やす以外に、たんぱく質を積極的に摂ることも意識してください。たんぱく質の1日の目安摂取量は、体重1kgあたり1g。たとえば体重60kgの方なら60gが必要です。
また、冷たいものを避けて常温or温かいものを口にしたり、からだをあたためる食材を選んだりするのもおすすめです。食材選びのために難しい知識を身につける必要はありません。悩んだら「冬が旬の食材」を選ぶと、自然と冷えやほてりをコントロールしやすくなります。
それから、1日の中で「血行をよくする、汗をかく時間」を設けるのも効果的。ぜひ毎日の入浴やサウナなどを習慣にしてください。
運動もそのほかの日常生活の工夫も、できることから実践して、着実に冷えにくいからだを目指してください。みなさんが「ぽかぽかとした毎日」を送れることを願っています。
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