タニタの考える健康
2023.06.28
最近はなかなか運動ができなくて、身体能力が落ちている気がする……。忙しい毎日を過ごすみなさんの中には、そのように感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。 そんな方に気をつけていただきたいのが、最近、話題になっている「フレイル」や「サルコペニア」。これらは決して高齢者だけの問題ではありません。 今回は、フレイルやサルコペニアとはどんなものか、その予防のカギになる「量と質の両方を意識した筋肉のつけ方」について、生体データの解析を担当する文がご説明します。
INDEX
株式会社タニタ 開発部 生体科学課 文 鉉太
2019年入社。体組成計をはじめ、さまざまな商品の開発に使われる生体データの解析業務をメインに担当。そのほか、製品化に必要な市場、特許の調査や機械設計などにも幅広く携わる。
フレイルとは、虚弱を意味する英単語「Frailty(フレイルティ)」が語源で、簡単にいうと「運動や認知の機能が低下している状態」を指します。一方のサルコペニアは、フレイルに含まれる要素のひとつで、「筋力が低下した状態」のことをいいます。
ここから、フレイルとサルコペニアについてもう少し詳しく見ていきましょう。
加齢などが原因で、運動や認知の機能が低下した状態のこと。心身の健康に何らかの問題があり、「要介護」になる少し手前の段階です。
下の図のように、フレイルには、大きく分けて「身体的側面」「精神的側面」「社会的側面」という3つの側面があります。
今回の記事では、このうちの「身体的要素」にフォーカスを当てて、予防方法をお伝えしていきます。
サルコペニアはフレイルにおける身体的要素の代表例のひとつ。筋肉量が減少し、筋力が低下した状態のことを指します。
サルコペニアになると、歩くことが難しくなったり転倒リスクが上がったりと、生活動作への支障が出やすくなります。
タニタでは、フレイルやサルコペニアを予防するために、筋肉をつけることが重要だと考えています。ここでいう「筋肉をつける」とは、筋肉の「量」を増やすだけでなく、筋肉の「質」を高めることも意味します。
「筋肉の量はわかるけれど、筋肉の質ってなんのことだろう?」と首をかしげている方もいらっしゃるでしょう。多くの方にとって、「筋肉の質(以下、筋質と表記)」はあまり聞きなれない言葉かもしれません。
筋質は以下のような意味をもちます。
筋肉を構成する「筋線維」と「それ以外(脂肪や水分、結合組織)」との比率のこと。
筋線維が密に存在し、それ以外の要素が少ない状態のことを「筋質が高い」といいます。反対に、筋線維が細く、それ以外の要素が多い状態は「筋質が低い」とみなします。
筋質は、MRIやCTによる精密検査で調べられます。ご家庭では、タニタの体組成計(一部機種)ではかることができます。
サルコペニアの診断で、注目されるのは筋肉量です。
しかし近年の研究で、サルコペニアの方は、筋肉量が少ないだけでなく筋質も低い傾向にあることがわかってきました。やはり、筋肉の量だけでなく、筋質にも目を向けていく必要があるといえそうです。
いつまでもスムーズにからだを動かせるように、量と質、両方の維持や向上を目指しましょう。
筋質低下の最も大きな原因は加齢です。成長期を過ぎると筋線維は次第に細くなっていくため、筋質は加齢に伴って少しずつ低下します。若いときと同じ食事や運動習慣を続けているだけでは、筋質をキープできません。
筋質を維持するためには、身体活動量(運動量)を増やしたり、食事内容に問題がある場合は、栄養バランスに配慮したりする必要があります。年齢を重ねているにもかかわらず、以前よりさらに身体活動量やエネルギー摂取量が減っている方は要注意。筋質は低下する一方です。
フレイルやサルコペニアと聞いても、20代や30代では「自分にはまだ関係がない」と感じる方も多いでしょう。
しかし、実はそうではありません。なにもしなければ筋肉はゆっくりと確実に衰えていくので、ぜひ早めに対策をスタートしてください。
筋質は、わかりやすくいうと、筋肉のパフォーマンスに影響を及ぼすものです。
例えば、筋質が向上すれば、これまでよりも重いものを持ち上げられるようになる可能性があります。反対に筋質が低下すると、転倒しやすくなるなど、日常動作に支障が出るリスクが上がります。
筋肉のパフォーマンスには、筋肉量やそのほかのからだの状態などが複合的に影響しますが、筋質もその要因のひとつになりえることは確かです。
また、筋肉の量・質の状態が変化するときは、先に筋質から兆候が見られます。筋質が低下してきた場合、その状態が続くと筋肉量も減る可能性があるので注意が必要です。
筋質を高める方法は、筋肉量を増やすためのメソッドと同じです。
筋肉トレーニングを中心とした運動を習慣にし、食事は栄養バランスに配慮して十分な量を食べましょう。栄養面では、特にたんぱく質を必要量摂るように意識してください。
筋質や筋肉量は、年齢を問わず筋肉トレーニングによって高めることができます。
「ずっと運動していないから今さらやっても意味がない」「すでに高齢だから手遅れかもしれない」なんて諦める必要は一切ありません。今この瞬間から、フレイルやサルコペニア予防を始められます。
一方で、筋肉の質や量がすでに落ちている方ほど、筋肉トレーニングを始めるための心身のハードルが高くなってしまう気持ちもよくわかります。今より少しでも多く動くことを意識して、少しずつ運動を習慣化するのがおすすめです。
先ほども触れたとおり、筋質は筋肉量よりも先に変化するものです。
そのため、「からだづくりに取り組んでいるけれど、なかなか筋肉量が増えなくて投げ出しそう……」と感じている方は、ぜひ筋質をはかってみてください。変化が早くに出やすいので、モチベーション維持につながるはずです。
私自身も、日常的に体組成計でからだをはかり、自分の筋肉の現状をきちんと把握するようにしています。そうして筋質の推移を確認する習慣をつけると、筋肉の変化に早く気づけるので、健康維持がラクになりますよ。
フレイルやサルコペニアは、なによりも予防が大事。ぜひ若いうちから、からだの変化に敏感に気づける仕組みを生活に取り入れてください。
この記事をきっかけに、今後は筋肉の量だけでなく質も意識して、さらに健康的なからだづくりを目指してもらえたらうれしいです。
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