PRODUCT STORY

2024年度グッドデザイン賞受賞!2つの商品のデザインの裏側

2024.11.01

2023年7月に発売したコンディションセンサー「TC-421」と、2022年8月に発売したアルコール検知器「アルブロ FC-810」が公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2024年度グッドデザイン賞」を受賞しました。 これらのデザインはどのようにして生み出されたのでしょうか。今回はそれぞれのデザイン担当者にその裏側を聞きました。

プロフィール

株式会社タニタ デザイン部 部長 小早川 達俊
2000年に新卒でタニタに入社。入社以来20年以上デザインを担当。
これまで業務用体組成計のフラッグシップ機種のほか、家庭用体組成計などタニタの商品全般のデザインを担当。2016年より部長としてすべてのデザインを統括している。

株式会社タニタ デザイン部 坪田 将知
2011年に新卒でタニタに入社以来、体組成計やタイマーのデザインを担当している。
2019年にグッドデザイン賞を受賞したタイマーの「TD-415」のほか、同年にリニューアルした「TANITA」のロゴのデザインも担当。アルコール検知器の担当は今回が初めて。


見やすさと馴染みやすさのバランスを追求したコンディションセンサー「TC-421」

小早川:

コンディションセンサー「TC-421」は、熱中症や季節性インフルエンザになりやすい室内環境をお知らせする温湿度計です。
実はこの商品はもともと海外で展開していた商品でした。この商品を日本で発売することになり、当初は海外向けのデザインのまま変更しない予定でしたが、日本のデザインチームが働きかけて日本向けにデザインを変更しました。

▲「TC-421」は温湿度計としてだけではなく、時計やカレンダー、アラーム機能など、日常生活で役立つ機能を備えているのも特徴

 

小早川:

日本で販売するにあたり、デジタル表示の主張を抑えつつも表示を見やすくすること、部屋に馴染むデザインにすることを意識しました。
近年の温湿度計はデジタル化に伴って商品の凹凸も少なく、全体的にフラットになり画面とフレームというシンプルな構成です。そのうえで、タニタらしい特徴と見やすさ、使いやすさをバランスよく両立させました。

▲表示部は読みやすく、部屋に馴染むように

 

表示部の文字のデザインは、大きいだけでは部屋の中で目立ちすぎてしまい、目障りに感じてしまいます。そうならないように、文字とフレームの間隔や表示同士のバランスを調整し、自然で見やすい絶妙な配置にこだわりました。
 

また、通常は印刷する「TANITA」のロゴを刻印にして控えめにし、全体的に目にとってストレスにならないよう心掛けました。
ロゴを刻印にすることについて当社の商品では珍しく、あえて主張しないデザインにすることへの商品企画からの不安の声もありましたが「やってみよう」ということで採用しました。わずかな違いではあるものの、それが審査においても評価いただけました。


誤操作を起きにくくするデザインを追求した「アルブロ FC-810」

坪田:

「アルブロ FC-810」は、クラウドでデータを管理でき、かつ持ち運びに便利なコンパクトサイズのアルコール検知器です。専用のアプリケーションと接続して使用することで、検知器のすり替えや被検者のなりすましなどの不正を防止し、外出先で計測できるのが特徴です。

▲「アルブロ FC-810」は業務用機器ながらもポケットに入るコンパクトさが特徴

 

坪田:

今回はターゲット層を広く設定し、男女兼用、年代もあえて絞っていません。ターゲット層が広いぶん、極力シンプルで直感的、かつフォルムやカラーリングも含めて全体的に中性的なデザインを心がけました。他のモデルはどちらかというと角ばったフォルムをしているものが多いのですが、今回はあえて丸みをもたせているのも特徴です。

「持ち運びができる」という点では、ポケットにいれたときに服にひっかからないように設計したのもポイントです。できるだけ凹凸がない形状にし、ボタンは凹ませる形状にしています。そうすることでポケットのなかでの誤操作も起きにくくしました。
見た目の美しさだけではなく、操作ミスといったエラーを減らすのもデザインだと考えています。

 

また、業務用としてはこれまでにない小型サイズを目指したため、内部の機構との調整が難しかったです。

というのも、ただ単に機能を追加していくと、本体サイズがどんどん大きくなってしまうんです。そうならないよう、内部の機構まで企画担当者や技術担当者と一緒に検討しました。
センサー部分は交換できるため取り外せるのですが、センサーカートリッジと本体の間のロック機構はとくに苦労しました。従来のものでは大きすぎて今回のモデルには搭載できないため、企画担当者と作戦会議を重ね、3Dプリンタで試作を繰り返して新たなロック機構を設計しました。

▲試行錯誤の末に完成したロック機構

 

坪田:

今回の受賞は商品の見た目だけが評価されたわけではないと思っています。一緒に試行錯誤してくれた企画、技術の担当者にも感謝しています。


タニタのアルコール検知器は進化を続けていく

小早川:

タニタでは25年近くアルコール検知器を販売していますが、そのうちアルコールチェッカ-「EA-100」(2018年)、「アルブロ FC-1500」(2021年)、「アルブロ FC-810」(2024年)の3商品がグッドデザイン賞を受賞しています。
その要因は、それぞれの商品が、「事業者のアルコールチェックの義務化」など世の中の動きやニーズに合わせてデザインされている結果だと考えています。


たとえばアルコールチェッカ-「EA-100」は、個人で使用しやすいよう小型化した点、「アルブロ FC-1500」は業務用として丈夫で堅牢に使え、不正防止の機構を盛り込んだ点。「アルブロ FC-810」は前述のとおり、携帯のしやすさやカートリッジ交換によってメンテナンスができる点が特徴です。

▲左からアルコールチェッカ-「EA-100」(2018年受賞)、「アルブロ FC-1500」(2021年受賞)、「アルブロ FC-810」(2024年受賞)

 

小早川:

時代のニーズに合わせて商品をデザインしてきたからこそ、次の課題は“タニタのアルコール検知器”として一貫性を持たせること、そしてイメージを共通化していくことだと考えています。

計測機器で商売するわたしたちだからこそ、誠実さ・信頼感がタニタの商品デザインの根底にあります。そういった一貫性がユーザーの信頼を築き、長く使ってもらえると信じています。

 

タニタでは、商品そのものだけではなく、パッケージや使用する体験までも含めて「商品」と考えています。ユーザーの生活に一層よりそった商品づくりを続けることで、 “タニタらしさ”や“タニタらしいデザイン”をつくり上げていきたいと思います。

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