タニタの考える健康
2024.08.22
タニタの新規事業に欠かせない「コア技術」。その研究・開発を担うのがコア技術研究所(通称"コア研")です。 「コア研コラム」では、研究所に所属する先生方に健康について様々なお話を伺っていきます。今回は、女子栄養大学栄養学部教授の上西先生 に教えていただきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
骨粗鬆症(骨粗しょう症/こつそしょうしょう)の病状は名前からも明らかで、「骨」が粗くなり、「鬆」が入った状態です。「鬆」は「す」とも読み、根菜の芯にできる穴、茶碗蒸しやプリンなどの表面や内部にできる穴を指します。骨粗鬆症とは、骨強度(骨の密度※骨密度と骨質)が低下し、骨折リスクが高まる病気。自覚症状がないため、多くの人が「危険な状態であること 」に気づけません。
日本における骨粗鬆症の患者数は、2022年時点で女性が約1,180万人、男性が約410万人、合計で1,590万人程度。2015年は合計1,300万人弱だったので、7年間で約300万人増えています。患者数が増大している要因は高齢化。患者数は今も増加の一途をたどっており、国も警鐘を鳴らしています。
私たちの細胞や筋肉、皮膚などがそうであるように、骨は一定の期間で既存の組織を破壊し、新しい組織をつくって、生まれ変わっています。その「壊す」「つくる」のバランスは、成人期を境に「壊す」が優位に。
年齢を重ねるほどその傾向が顕著になり、次第に骨の密度(骨密度)が下がって骨粗鬆症へつながっていきます。
骨粗鬆症は、圧倒的に女性に多い病気です。
理由は、女性は男性に比べて骨量が少なく、骨密度も低いため。さらに閉経後は、ホルモンバランスの乱れ(骨からカルシウムが失われるのを防ぐ「エストロゲン」が急減する) によってリスクが高まります。
そのほか、少食や偏食の方、からだを動かす習慣がない方、家族に骨粗鬆症患者がいる方も発症リスクが高くなります。
骨粗鬆症は女性の高齢者に多い病気ですが、実は若い世代も無関係ではありません。
極端な食事制限ダイエットをすると、月経不順や無月経が起こりやすくなり、「閉経後と似た状態=骨量や骨密度がどんどん減少していく状態」になります。
骨粗鬆症を防ぐべき理由は、ズバリ「骨折するから」。
当たり前ですが、骨折すると日常生活に支障をきたします。とくに高齢の方では骨折が原因で要介護状態になるリスクもあり、健康寿命が短縮される可能性も。若い方で骨粗鬆症による骨折は稀ですが、中高年になると骨量が増えないので早くから予防の意識をもつことは大切です。
加齢に伴って背中が曲がったり身長が縮んだりするのは、多くの場合骨粗鬆症による背骨の圧迫骨折が原因。「骨折=ポキっと折れる」というイメージがありますが、実はもろくなった背骨は潰れるのです。
骨粗鬆症を予防するには、次の3つをとくに意識してください。
最も重要なのは、栄養バランスのとれた食事を適切な量を取ることです。
「骨粗鬆症予防にはカルシウムを摂取すればいい」と考えている方は多く、それも正解のひとつではありますが、それだけでは不十分。なぜなら、骨の約半分はたんぱく質で構成されていますし、カルシウムを効率的に吸収するにはビタミンDも必要だからです。
また、丈夫な骨をつくるには適正体重を保つことも大切なので、エネルギーも過不足なく摂取しなければなりません。
骨には「重力がかかることで丈夫なる性質」があるため、骨粗鬆症予防には運動も必要。寝たきりだったり、宇宙飛行士のように無重力空間にいたりすると、カルシウムを多く摂取しても骨から失われてしまいます。
具体的には、通勤や家事など、日常生活の中の動作を意識して増やしましょう。とくに骨に刺激を与えるのに効果的なのは、ジャンプの動きです。階段を使用すると似た効果を期待できます。
1日に15~30分の日光浴でビタミンDを合成できます。最近のガラス窓の多くはUVカット加工が施されているので、外に出て日差しを浴びましょう。
暑い季節は無理をせず、少しだけ太陽と仲よくなるよう心がけてください。手のひらを日光にあてるだけでもOKです。
骨粗鬆症による骨折を防ぐには、骨を支える筋肉をきたえることも効果的。転倒リスクの低減も目指せるので、ぜひ運動を習慣にして、筋肉を増やしてください。
高齢になってから骨量や骨密度を自力で向上させるのは難しいですが、筋肉はトレーニングによって年齢に関係なく増やせます。
骨粗鬆症と診断された場合、食事や運動習慣の改善に加えて薬物治療を行えば、高齢でも骨密度を上げられます。
しかし、骨粗鬆症には自覚症状がないため、中には途中で服薬をやめてしまう方も。骨折してからでは遅いので、骨粗鬆症のリスクを理解し治療を継続してください。
自分が骨粗鬆症かどうか、またはリスクがあるかは、健康診断と検査で調べられます。
「骨粗鬆症検診」は各自治体で実施されており、40~70歳の女性に対して5歳刻みで実施されるケースが多いです(各自治体のルールをご確認ください)。骨粗鬆症検診では、基本的には問診と骨量測定でリスクを判断します。
骨量測定では、X線や超音波を使って骨密度を測定します。
初めに触れた通り骨粗鬆症には自覚症状がないため、ぜひ骨粗鬆症検診を活用してください。
骨は加齢に伴って減っていくので、一度受診して終わりではなく、定期的な受診が重要です。検診の対象ではなくても、骨の状態に不安を感じている方、骨密度の測定経験がない方、骨粗鬆症リスクが高い方などは、一度、整形外科で医師に相談してみてください。
骨粗鬆症検診の受診率は、現状ではわずか5%程度。これを受け、厚生労働省による国民健康づくり運動「健康日本21(第3次)」では、受診率を15%までの引き上げることを目指しています。
丈夫な骨は、健やかに長生きするために欠かせません。
タニタ製体組成計の一部機種では「推定骨量」もはかれるので、継続的に数値を確認し、減ってきていると感じたら医療機関に相談したり、検査を受けたりする目安として活用するのも良いと思います。
また、日常的に体組成計ではかり自分のからだの状態を把握することで、食事や運動を含めた生活習慣にも意識を向けやすくなるはず。私自身も、体組成計で日々からだをはかり、牛乳を毎日飲んだり、エレベーターを使わずに階段で移動したり、骨粗鬆症予防のためにできることを続けています。
このコラムをきっかけにひとりでも多くの方が骨粗鬆症検診を受診し、骨粗鬆症予防 を通じて健やかな未来へ歩めるよう願っています。
「コア技術研究所コラム」では、研究所に所属する先生方に健康について様々なお話を伺っていきます。 ご専門の先生ごとに過去発信コラムをまとめてありますのでぜひ参考にしてくださいね。
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