タニタの考える健康

糖質制限って? 健康維持に必要な食事の取り方とは【コア研コラム vol.10】

2024.10.04

タニタの新規事業に欠かせない「コア技術」。その研究・開発を担うのがコア技術研究所(通称"コア研")です。 「コア研コラム」では、研究所に所属する先生方に健康について様々なお話を伺っていきます。今回は、総合健診推進センター長(所長) の宮崎先生に教えていただきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。

プロフィール

宮崎 滋(みやざき しげる)先生

公益財団法人結核予防会理事・総合健診推進センター長
肥満症診療ガイドライン2016 作成委員長
日本肥満症予防協会 副理事長
日本生活習慣病予防協会 顧問
日本肥満学会 名誉会員

肥満症をはじめとするメタボリックシンドローム が専門。2010年には、日本肥満学会より
「日本肥満学会学会賞」を受賞。2015年より公益財団法人結核予防会理事・総合健診推進センター長に就任。
 

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糖質制限とは? からだにどんな変化が起こる?

糖質制限とは、摂取エネルギー中の糖質の割合を、全体の50%以下に抑えることを指します。糖質を控えると、基本的には摂取エネルギー量が減り、体重も減少するものです。肥満の方が減量できれば、インスリン(血糖値を一定に保つ働きがあるホルモン)の働きの改善、それに伴う血糖値の正常化が期待できます。

 


しかも、糖質制限によって摂取エネルギー量を減らした場合、体重が早く減りやすいことも明らかになっています。

体重が5%減ると、血糖値が3%減り、中性脂肪の値も下がるので、  肥満が原因で生活習慣病リスクが高くなっている方は、早めの減量を目指すといいでしょう。


ただし、糖質はからだにとって必要な栄養素であるため、糖質の割合が40%を下回るやり方はおすすめできません。また大前提として、糖質制限はBMIが25以上の「肥満」に分類される方に向いている方法と考えてください。

糖質を摂りすぎるとなぜ太る?

糖質を摂取すると膵臓から「インスリン」が分泌され、その働きによって、筋肉や肝臓、脂肪細胞に糖が取り込まれます。

吸収された糖はエネルギー源としてエネルギー消費されますが、使われなかった分は同じくインスリンの働きで中性脂肪に変えられ、最終的には脂肪細胞に蓄積します。つまり、糖質を摂りすぎ使われないエネルギーが多くなると「脂肪が増える=太る」のです。

糖質制限+運動で食欲を抑えられる!

糖質の摂取エネルギー量を制限したうえで運動すると、からだは蓄積している脂肪をエネルギー源として優先的にエネルギー消費します。その過程で生まれるのが、「ケトン体」という物質。ケトン体には、食欲を抑える効果があります。


ただし、糖質ではなく脂質の摂取エネルギー量を抑えて脂肪を燃焼した場合も、同じようにケトン体は発生します。食欲を抑えたいなら、意識したいのは糖質・脂質の内訳ではなく、合計摂取エネルギー量の抑制です。  
 


糖質制限の注意点やデメリット

糖質制限を実践するのにあたり、よく見られるのが「糖質を減らす代わりに脂質を増やしてしまう」ケース。それではいくら糖質を抑えても摂取エネルギー量は減らず、むしろ増える可能性すらあり、なかなか減量には結びつきません。

 


しかも、脂質の割合が高い食事は、心筋梗塞をはじめとした動脈硬化系疾患のリスクを高めます。たとえ血糖値を正常化できても脂質異常が起こるため、健康とはいえない状態につながるので、糖質制限中は脂質の摂取エネルギー量を意識的にチェックしてください。
 

 

また、普通体型・やせ型の方、つまり「からだに余分な脂肪がない方」が糖質制限をすると、たんぱく質をエネルギー源としてエネルギー消費します。

すると、筋肉や様々な臓器の衰えを招き、やがては筋肉量が減少してサルコペニア※などのリスクを上昇させかねません。これが、肥満の方以外に糖質制限をおすすめできないおもな理由です。

 

 

しかし、日本人、特に女性は体形管理への意識が高い傾向にあり、やせているのに糖質制限を実践しているケースが多く見られます。もし糖質制限をしている最中に慢性的な疲労感やだるさが生じるようなら、今すぐに食事のあり方を見直してください。

 

※サルコペニア:サルコペニアとは、加齢や疾患によって筋肉量が減少、および筋力が低下することです。これにより身体機能が衰え、歩行に支障が出たり、転倒しやすくなったりといったトラブルが起きやすくなります。

糖質の過剰な制限は健康増進の妨げに

糖質に含まれる食物繊維は、大腸内で腸内細菌に分解されると「短鎖脂肪酸」という物質を生み出します。短鎖脂肪酸には様々な健康効果があり、たとえば腸内環境を整えたり、大腸のバリア機能を高めたり、コレステロールの合成を抑制したりします。
過剰な糖質制限による食物繊維の不足には、こうした「短鎖脂肪酸がもたらすうれしい効果を得られなくなる」というデメリットもあるのです。
 

高血圧改善のポイントは、摂取エネルギー量

先ほど「糖質制限によって摂取エネルギー量を減らせば比較的早い段階で体重が減りやすい」とご紹介しましたが、長期的なダイエットや肥満の方の高血圧改善では、“特定の栄養素を減らすことによる特有の効果は認められない”と医学的に明らかになっています。

 

つまり、結果を左右するのは「糖質の摂取エネルギー量」ではなく「エネルギーの摂取量」。糖質を適量摂っていても、脂質を減らして摂取エネルギー量を抑えれば、体重は減って血糖値や中性脂肪の値も改善します。

 


一方で、長期間の糖質制限の安全性についてのエビデンスは、現段階では確立されていません。偏った食習慣で健康をそこなわないよう、くれぐれも注意してください。
 


糖質制限が向いているのはどんな人?

繰り返しになりますが、糖質制限によるダイエットを検討してもよいのは肥満もしくは太り気味の方です。糖質の摂取エネルギー量が適正値よりも高めの方にも向いているといえますが、近年は米の摂取量も減少しており、糖質を過剰に摂っている方はそう多くないと考えられます。

これらをふまえると、糖質制限は誰でも実行できる手段とはいえません。

 

 

肥満ではない方は、「糖質を減らす」ではなく「バランスのよい食事を心がけ、摂取エネルギー量を意識する」ことで体形や健康を維持してください。肥満や多くの生活習慣病になる原因は、糖質だけの摂りすぎではなく、食事総量(摂取エネルギー)のオーバーです。


なお、1日の摂取エネルギー量を200kcal(ご飯お茶碗軽く一杯)ほど減らすなら糖質でコントロールしても問題ありませんが、それ以上を目指す場合は脂質の制限も必要。栄養バランスが偏らないように意識してください。

 

そして、食事制限だけでなく運動もお忘れなく。肥満の生活習慣病患者が増えている背景には、運動不足の問題もあります。

普通・やせ型で血糖値が高い場合、糖質制限では改善しない

ここまで読んで、「私はBMIが25未満で肥満ではないけれど血糖値は高く、どうしたらいいのだろうか」と首をかしげている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

「血糖値が高い」と一口にいっても、肥満の方とそうでない方とでは原因が全く異なります

 

具体的には、肥満の方は内臓脂肪の増加の結果としてインスリンの効きがよくないため血糖値が上がる傾向にあるのに対し、普通・やせ型で血糖値が高い方は、インスリン分泌量が低いといった体質的な原因が隠れている可能性が高いのです。

 

肥満ではないのに血糖値が高い場合、医療機関を受診のうえ原因を特定し、インスリン分泌を促す治療をはじめとした「個別の原因に応じた対策」を講じる必要があります。

なお、普通・やせ型で体脂肪率やコレステロールが高い方も、同じように医療機関を受診してください。
 


やみくもな制限は禁物。まずは食事の見直しから

近年は糖質制限が一大ブームになっていますが、流行っているからと安易に実践すると、かえって健康をそこなう可能性もあります。ダイエットや健康づくりで重要なのは、「自分に必要なこと」の見極め

 

まずは現在のからだの状態や食事内容をきちんと見直し、「摂りすぎている栄養素」があれば減らしてバランスを整え、BMI判定で肥満状態にあるのであれば摂取エネルギー量を制限するのが正解です。


「健康づくりのはずが、結果的に健康を害してしまった」という事態にならないよう、正しい知識をもって取り組んでください。
 

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