食事
2022.11.28
ダイエットと切っても切り離せないのが、摂取・消費エネルギーのカロリーと、カロリー計算のこと。成人男性・成人女性が上手にカロリーと付き合う方法について、体組成計の開発に携わる文がご説明します。
INDEX
株式会社タニタ 開発部 生体科学課 文 鉉太
2019年入社。体組成計をはじめ、さまざまな商品の開発に使われる生体データの解析業務をメインに担当。そのほか、製品化に必要な市場、特許の調査や機械設計などにも幅広く携わる。
「カロリー」とひとことでいっても、「摂取エネルギーのカロリー(摂取カロリー)」と「消費エネルギーのカロリー(消費カロリー)」の2つがあります。ダイエットのためにカロリー計算をするなら、それぞれを分けて理解することが必要です。
摂取カロリーというのは、食事から摂るエネルギーのカロリーのこと。人間が生きていくためには常にエネルギーを使いますが、そのエネルギー量≒必要な摂取カロリー量の目安となります。
推定エネルギー必要量(kcal/日)
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
18~29歳 | 2,300 | 2,650 | 3,050 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30~49歳 | 2,300 | 2,700 | 3,050 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50~64歳 | 2,200 | 2,600 | 2,950 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65~74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | - | 1,400 | 1,650 | - |
これは、厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2020年版)』から、成人男性&成人女性の1日あたりの摂取カロリー目安量を抜粋したものです。表にある「身体活動レベル」というのは、それぞれ次のような基準で分けられています。
・レベルI
基本的に外出せず、1日のほとんどを家の中で座って過ごす。
・レベルII
デスクワークが中心だが、職場内での移動や立ち上がっての作業なども行い、また通勤や買い物などの外出もする。
・レベルIII
からだを動かす仕事に就いていたり、スポーツなどの活発な運動習慣があったりする。
表からわかるように、必要なエネルギーの目安量は年齢や性別・身体活動レベルなどによってさまざま。たとえば35歳の男性で、仕事はデスクワーク、通勤や軽い散歩以外に運動習慣はない方の場合は2,700キロカロリーです。
ぜひ、ご自身の摂取カロリーの目安を確認してみてください。
消費カロリーというのは、身体機能の維持や運動などによって失われるエネルギーのカロリーのこと。こちらの円グラフは、その内訳を示したものです。
「カロリー消費=運動」とイメージされる方も多いかもしれませんが、実は私たちが毎日消費しているエネルギーの約60%は、基礎代謝によるものなのです(平均的な体形で、平均的な生活をしている方の場合)。
基礎代謝とは、運動をしなくても消費されるエネルギーのことで、筋肉が消費するエネルギー量が最も大きく(約22%※)、それとほぼ変わらないくらいの割合で肝臓、脳が続きます。
では、次は、基礎代謝でどれくらいのカロリーを消費しているのか具体的に見ていきます。
性・年齢階層別基礎代謝基準値と基礎代謝量(平均値)
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | 基礎代謝基準値 (kcal/kg 体重/日) | 基礎代謝量 (kcal/日) | 基礎代謝基準値 (kcal/kg 体重/日) | 基礎代謝量 (kcal/日) |
18~29歳 | 23.7 | 1,530 | 22.1 | 1,110 |
30~49歳 | 22.5 | 1,530 | 21.9 | 1,160 |
50~64歳 | 21.8 | 1,480 | 20.7 | 1,110 |
65~74歳 | 21.6 | 1,400 | 20.7 | 1,080 |
75歳以上 | 21.5 | 1,280 | 20.7 | 1,010 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに作成
上の表は、成人男性&成人女性の平均基礎代謝量を示したものです。男性は1,500キロカロリー、女性は1,100キロカロリー程度で、どちらも50歳頃からゆるやかに減少していくことがわかります。
皆さんご存じのとおり、体重の増減や維持にあたっては、摂取カロリーと消費カロリーを以下のようなバランスに調整する必要があります。
・現在の体重を維持したい場合:摂取カロリー=消費カロリー
・体重を減らしたい場合:摂取カロリー<消費カロリー
・体重を増やしたい場合:摂取カロリー>消費カロリー
しかし、
「現時点での1日の消費カロリー」-「現時点での1日の摂取カロリー」=100キロカロリー
になる状態を続ければ、継続的に少しずつ体重が減り続けるのかというと、実はそうはなりません。
生活スタイルを変えず食事制限のみによって体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉も減少します。また、摂取カロリーを減らすと食後の熱生産(栄養素が分解され、その一部が熱として消費されること)の量も低下。すると、体重の減少に比例して消費エネルギーも減少していくので、どこかで「摂取カロリー=消費カロリー」になります。
そこからさらに体重を落とすには、消費エネルギー量を増やすか、摂取カロリーをさらに減らすかという対策が必要です。
ちなみに、脂肪1gを摂った場合の摂取カロリーは9kcal。一方で体脂肪を1kg減らすには、約7,200kcalのカロリーを消費する必要があります。
炭水化物や脂質で摂取したカロリーも、たんぱく質で摂取したカロリーも、数字だけで見れば同じです。
一方、私たちのからだは常に代謝していて新しく作り変えられています。もちろんこれは筋肉にもいえることで、筋肉量を維持するためには、たんぱく質の摂取が必要になります。代謝をするとき、食事から摂るたんぱく質が不足していると、筋肉の分解だけが進み筋肉量は減ってしまうんです。
Q1でお話ししたとおり、基礎代謝量を高くキープするためには筋肉量の維持が欠かせません。食品のカロリーの数字だけを見て栄養バランスを考えないと、いつの間にか基礎代謝量が減り、摂取カロリーは増えていないのに太ってしまう“太りやすく痩せにくいからだ”になる可能性があります。
「基礎代謝量」の表でご紹介したように、私たちの基礎代謝は加齢に伴いゆるやかに減少していきます。また、年齢とともに、一般的には身体活動量も減りやすい傾向にあります。
一方で、食の好みや食べる量は意外と変わらないもの。結果、年齢を重ねるほどに「摂取カロリー>消費カロリー」となりやすく、「食べる量は同じなのに体重が増えた」という現象が起こりがちになります。
そんな事態を避けるために必要なのは、20代や30代のときよりも運動量を増やすこと。筋トレと有酸素運動のどちらもバランスよく行うのが理想的ですが、太りにくいからだを目指すなら、基礎代謝量を増やす筋トレがおすすめです。
「太らないための、食事と運動量」を体感でつかめれば、細かくカロリー計算をする必要はありません。そのためには、まずは自身のからだを「はかること」がおすすめです。
体重の増減をチェックし、増えたら原因を振り返り、生活を変える……これを繰り返せば、からだへの理解は深まっていくはず。できれば体組成計を使い、細かくはかれるといいですね。基礎代謝量や筋肉量、体内年齢、体脂肪率、内臓脂肪レベルなどがわかる体組成計を活用すれば、からだの変化は一目瞭然です。
はかるだけなら、細かくカロリー計算をするよりも圧倒的にラクなはず。はかることを習慣化して、数字の変化に応じて生活を見直してみてください。
参考文献:
糸川嘉則ほか,「栄養学総論 改訂第3版」,南江堂, 2003年
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